はじめに
AIは「甘みはほぼ感じない」と読んだ。
自分が実際に飲んで付けたのは「甘みはやや高い」。
ここが1つ、大きくズレた。
2026年5月5日、和酒処ひらいで開けた「土佐久礼 辛口純米」。
高知県中土佐町、西岡酒造店の一本だ。
日本酒度+10という、際立った辛口スペックを持つ。
ラベルの情報だけを渡し、AIに味を推定させる。
そのあとで実際に飲んで、答え合わせをする。
SipLogはそれを毎回記録している。
今回は13項目のうち、何が当たって何が外れたのか——。
この記事でわかること
- 土佐久礼 辛口純米のスペックと蔵の情報
- ラベル情報だけを渡したAIの事前予測(13項目)
- 実際に飲んで付けた13項目のテイスティングスコア
- AI推定と実飲、どこが当たってどこが外れたか
- 合うペアリングとおすすめの場面
基本情報

まず、ラベルとスペックを整理しておく。
- 銘柄名: 土佐久礼 辛口純米
- 製造年月: 2026年2月
- 分類: 日本酒(純米酒)
- 蔵元: 西岡酒造店(有限会社)
- 所在地: 高知県高岡郡中土佐町久礼
- 蔵の歴史: 約240年
- 仕込み水: 四万十川伏流水
- 精米歩合: 70%
- 日本酒度: +10(大辛口領域)
- 価格帯: ~1000円
240年という蔵の歴史に、まず目が留まる。
土地に根を張った酒蔵だということが、数字だけで伝わってくる。
精米歩合70%は、大吟醸クラスと比べて磨きは控えめだ。
その分、米の外層由来の旨味やコクが残りやすい。
日本酒度+10は、大辛口の目安を大きく超える数値。
推定では、仕込み水は軟水から中軟水の傾向を持つ。
まろやかな口当たりを支える要素になる。
四万十川という水源の名前も印象的だ。
清流のイメージと、大辛口という硬派なスペック。
この対比だけで、どんな酒なのか想像が膨らむ。
酒母や火入れ回数など、造りの詳細はラベルに記載がない。
そのため、今回の推定は数値スペックからの読みにとどまる。
このスペックだけを渡し、AIにブラインドで味を読ませた。
外観・香り・味わい

液色そのものについて、具体的な記録は残していない。
推定では、精米歩合70%の純米酒らしい、淡い黄金色を帯びる。
実際の色合いは、次回の記録で確認したいところ。
香りは穏やかだった。
フルーティ度は🔵⚪⚪⚪でやや低い。
香ばしさも🔵⚪⚪⚪、同様に控えめ。
華やかな吟醸香ではない。
米や麹由来の落ち着いた香りが中心だ。
香り系統は米・麹系、そして熟成系の要素も感じた。
グラスに注いだ瞬間、香りの主張は強くない。
だからこそ、口に含んだ時の変化が際立つ。
口に含むと、まず旨味の厚みが来た。
うま味は🔵🔵🔵⚪でやや高い。
重厚感も🔵🔵🔵⚪、同じ水準。
どっしりとした飲みごたえがある。
面白いのは甘みだ。
甘みは🔵🔵🔵⚪でやや高いと付けた。
日本酒度+10という辛口設計からすると、意外な結果だった。
数値だけを見れば、キリッとした辛口を想像する。
でも実際の舌の上では、甘みがしっかり存在感を示す。
酸味は🔵🔵⚪⚪で中程度。
苦味・渋味・刺激はいずれも🔵🔵🔵⚪でやや高い。
輪郭のはっきりした、骨太な味わい。
爽やかさは⚪⚪⚪⚪でとても低い。
キレの良さは感じるけれど、清涼感というより力強さで押すタイプ。
甘辛軸は参考値として「甘 ▯▯▯▮▯ キレ」を記録した。
全体としてはキレ寄りに振れている。
それでも甘みの要素は消えていない。
そこに、この酒の複雑さがある。
テイスティングスコア
実飲時に付けた13項目のスコアを、そのまま並べる。
甘み: 🔵🔵🔵⚪ やや高い
酸味: 🔵🔵⚪⚪ 中程度
フルーティ: 🔵⚪⚪⚪ やや低い
濃淡: 🔵🔵🔵⚪ やや濃い
ふくよか: 🔵🔵🔵⚪ やや高い
爽やか: ⚪⚪⚪⚪ とても低い
香ばしい: 🔵⚪⚪⚪ やや低い
重厚感: 🔵🔵🔵⚪ やや高い
うま味: 🔵🔵🔵⚪ やや高い
苦味: 🔵🔵🔵⚪ やや高い
渋味: 🔵🔵🔵⚪ やや高い
刺激: 🔵🔵🔵⚪ やや高い
香り系統: 米・麹系/熟成系
参考値として、甘辛軸は「甘 ▯▯▯▮▯ キレ」も記録している。
こちらは対決表の対象外だ。
数字を並べると、傾向がはっきりする。
濃淡・ふくよか・重厚感・うま味・苦味・渋味・刺激。
この7項目が揃って「やや高い」に寄っている。
一方、フルーティ・爽やか・香ばしいは低い側に集まった。
軽さや華やかさより、骨格の太さで勝負する酒だと分かる。
推定では、精米歩合70%という控えめな磨きが、この高スコア群を底上げしている。
米の外層由来の成分が、うま味や苦渋、重厚感につながりやすい。
大吟醸のような磨き込んだ酒とは、そもそも狙いが違うタイプ。
13項目のうち、約半数が「やや高い」に集中した。
こういう酒は、意外と多くない。
輪郭のはっきりした、密度のある一本だ。
甘みだけが、この骨太な傾向から少し外れている。
苦味・渋味・刺激と並んで高めに出ているのに、方向性は真逆。
辛口でありながら甘みも高い。
そこが、この酒の一番の個性だ。
こんな場面・人におすすめ
価格帯は~1000円。
気負わず日常使いできるラインだ。
味の骨格は、濃醇でキレのある辛口。
淡麗であっさりした酒では物足りない人に向く。
米の旨味をしっかり感じたい人にもおすすめできる。
苦味・渋味・刺激は、いずれもやや高めに出た。
辛口だからと侮ると、輪郭の強さに驚くタイプ。
軽やかな酒を想像していると、良い意味で裏切られる。
食中酒としての完成度は高い。
単独でじっくり飲むより、料理と合わせる場面に合う。
晩酌のメイン、あるいは土佐料理を囲む席にふさわしい一本だ。
冷やしても燗にしても、それぞれ違う顔を見せる骨格を持っている。
温度による表情の変化も、試す価値がある。
ペアリング
記録に残しているペアリングは、カツオのたたき・焼き魚・土佐料理全般。
高知の郷土料理との相性を前提にした組み合わせだ。
日本酒度+10、酸味は中程度。
苦味・渋味・刺激もやや高めという骨格を持つ。
脂の乗ったカツオのたたきには、この輪郭の強さがちょうど効く。
薬味やタレの香味にも負けない存在感がある。
焼き魚のような、醤油ベースのしっかりした味付けにも合わせやすい。
うま味とうま味が重なり合い、味わいの余白を埋めてくれる。
キレの良さが、脂っこさを後味に残さない。
土佐料理全般、という記録の幅の広さにも納得がいく。
一本で何品もカバーできる、扱いやすい食中酒だ。
甘みがやや高いという実飲結果を踏まえると、少し違う視点も見えてくる。
甘辛のバランスがある料理、たとえば煮付けのような一品にも届く幅がある。
骨太な味わいながら、間口は意外と広い。
AI推定 vs 実飲
AIには、ラベルとスペックの数値だけを渡した。
実飲データは、いっさい見せていない。
その状態で13項目の味を予測させたのが、以下のAI推定だ。
| 項目 | AI推定(事前) | 実飲 | 差 |
|---|---|---|---|
| 甘み | ほぼ感じない(大辛口想定) | 🔵🔵🔵⚪ やや高い | +3 |
| 酸味 | やや高め〜中程度 | 🔵🔵⚪⚪ 中程度 | -0.5 |
| フルーティ | 低い(穀物・米麹系寄り) | 🔵⚪⚪⚪ やや低い | +0.5 |
| 濃淡 | 濃醇寄り | 🔵🔵🔵⚪ やや濃い | -0.5 |
| ふくよか | 豊か(米由来の風味想定) | 🔵🔵🔵⚪ やや高い | — |
| 爽やか | 低め(醇酒寄りの読み) | ⚪⚪⚪⚪ とても低い | — |
| 香ばしい | 穏やか(際立つ香ばしさは想定せず) | 🔵⚪⚪⚪ やや低い | — |
| 重厚感 | 重厚感ありと推定(骨太タイプ) | 🔵🔵🔵⚪ やや高い | — |
| うま味 | しっかり濃厚 | 🔵🔵🔵⚪ やや高い | -0.5 |
| 苦味 | 控えめ | 🔵🔵🔵⚪ やや高い | +2 |
| 渋味 | 控えめ〜わずかにあり | 🔵🔵🔵⚪ やや高い | +2 |
| 刺激 | 強めのキレを想定 | 🔵🔵🔵⚪ やや高い | — |
| 香り系統 | 穀物・米麹系寄り | 米・麹系/熟成系 | — |
まず、いちばん大きくズレたのは甘みだった。
AIは日本酒度+10を根拠に「甘みはほぼ感じない」と読んだ。
確信度は「高」、かなり強気の推定だった。
実際には🔵🔵🔵⚪でやや高く、差は実に+3。
今回の13項目の中で、最大のズレとなった。
次に大きかったのが苦味と渋味で、どちらも差は+2。
AIはいずれも「控えめ」と予測している。
根拠は「キレが料理の邪魔をしない」という記載からの類推で、確信度は「低〜中」だった。
確信度が低かった項目ほど、実際とのズレも大きく出た格好だ。
一方、フルーティ・濃淡・うま味・酸味は、差が±0.5前後に収まった。
香り系統も、「穀物・米麹系寄り」という読みと実飲の「米・麹系」がほぼ重なる。
数値スペックから組み立てたAIの骨格読みは、大枠では大きく外していない。
けれど、甘みや苦渋のような細かい質感までは拾いきれなかった。
興味深いのは確信度との関係だ。
甘みは確信度「高」で外れ、うま味は同じく確信度「高」で近い数値を当てた。
確信度の高さだけでは、的中率までは測れないと分かる。
これがブラインド推定の限界であり、同時に面白さでもある。
日本酒度という1つの数値に、AIがどれだけ引っ張られたか。
今回の結果は、それを如実に示している。
数値の裏にある造りの工夫までは、ラベルだけでは見通せない。
まとめ
土佐久礼 辛口純米は、日本酒度+10の辛口だった。
それでいて旨味も苦味も渋味も、しっかり主張する一本。
AIは数値スペックから「濃醇でキレのある辛口」という骨格を的確に読んだ。
一方で、甘みの余韻や苦渋の輪郭までは読み切れなかった。
これは、ラベル情報だけを渡すブラインド推定の性質上、当然の限界でもある。
価格帯は~1000円。
気負わずに手を伸ばせる、日常づかいの一本だ。
この密度でこの価格帯なら、コストパフォーマンスも良い印象。
カツオのたたきをはじめ、土佐料理との相性は良かった。
また飲みたいと感じ、記録にも「はい」と残した。
2026年5月5日、和酒処ひらいで開けたこの一本。
スペックだけでは分からない甘みと苦渋の複雑さが、実際に飲んで初めて見えてきた。
日本酒度という数字1つだけでは、酒の全体像はつかめない。
そのことを、この一本が教えてくれた。
SipLog(酒譜)は、飲んだお酒の体験をAI推定と比較しながら記録する体験ログメディア。
今回のように、数値の読みと舌の記録が食い違うことも、もちろんある。
そのズレも含めて、記録していく。
酒は、記録するともっと旨い。

