透明に近いラムの隣に、ほとんど黒に見えるほど濃い一本が並んでいるのを見て、後者のほうが長く寝かせてあるはずだと思い込んだことがある。
調べてみると、それは思い込みだった。
ウイスキーには「樽で寝かせないとウイスキーと名乗れない」という決まりがあるが、ラムには同じような縛りが無い。
何年も寝かせたものもあれば、まったく寝かせないものもあり、見た目も無色から琥珀色、ほとんど黒に近いものまで幅がある。
ドリンクスライターのマイク・ギブソン氏がWSET(Wine & Spirit Education Trust)に寄せた記事によると、色の濃さで熟成年数や品質を判断するのは、ラムに関してはむしろ誤解のもとになりやすいという。
炭濾過と、カラメル色素として使われるE150が、そこに輪をかけているのだそうだ。
今回は、ラムの色がなぜあてにならないのか、色の代わりに何を見ればいいのかを、WSETの記事をもとにまとめておく。
この記事でわかること
- ウイスキーと違い、ラムには「樽で寝かせる」という決まりが無いこと
- 樽を通っていない、透明に近いラムがあること
- 見た目は淡くても、しっかり熟成されているラムがあること
- 「ゴールド」や「ダーク」という呼び方も、色の由来が樽とは限らないこと
- 色の代わりに、何を見て選べばいいか
ウイスキーと違って、ラムには「樽で寝かせる」決まりが無い

ウイスキーは、樽で熟成させなければウイスキーと名乗れない。
だがラムにはそうした決まりが無く、何十年も寝かせることもできれば、まったく寝かせずに出荷することもできる。
見た目も、無色透明のものから琥珀色、ほとんど黒に近いものまで幅が広い。
多くの飲み手は、色が濃いほど長く熟成されていて、質も高いはずだと考えがちだ。
だがWSETの記事によると、それはラムに関しては思い込みになりやすいという。
長く熟成させたウイスキーが、わずか3年ほど活発な樽で熟成させたものより色が薄いことがあるのと同じように、ラムにも似たことが起こる。
そこに、炭濾過とE150というカラメル色素が加わって、さらに見た目を曇らせているのだそうだ。
樽を通っていない、透明なラムもある

色が誤解を生む理由を知るには、そもそも樽を通っていないラムから見ていくとわかりやすい。
カリブ海からラテンアメリカ、近年では新興の産地でも、世界で流通するラムのかなりの部分は、熟成させずに蒸溜・瓶詰めされている。
ブラジル特産のサトウキビ由来の蒸溜酒カシャーサの大半、マルティニークやグアドループ、マデイラで作られる、搾りたてのサトウキビ果汁から作るラム・アグリコールの多く、オーバープルーフ・ジャマイカンラムのような、カリブ海産の糖蜜ラムの一部も、これにあたる。
原料の扱いや蒸溜方法、生産者が目指すスタイルはそれぞれ違うが、木の影響を受けていないという点では共通していて、サトウキビ本来の生っぽく青々とした風味が残る。
木を通していないのだから、色がつく要素も無い。
本当に無熟成のラムは、たいていウォッカのように透明で、色がついていなければ、フレッシュで軽やかな部類だと考えていい。
見た目は淡いのに、しっかり熟成されているラムもある

一方で、樽に入れてはいるものの、期間が短かったり、木の影響が出にくい樽を選んだりして、色が淡いまま仕上がるラムもある。
WSETの記事は、キューバの厳しい規定のもとで3年熟成させても、淡い色のまま出荷されるホワイトラム、バカルディ カルタ・ブランカを例に挙げている。
色だけでなく、風味も無熟成のラムに近いという。
もう一つの例が、ベネズエラの生産者による「ディプロマティコ プラナス」だ。
6年熟成させたあと、瓶詰め前に炭濾過にかけて、色のほとんどを取り除いてしまう。
棚に並んでいるときの見た目は無熟成のラムと変わらないが、味わいには相応に木の影響が残っている。
色を見ただけでは、熟成の有無すら判断できないということだ。
「ゴールド」や「ダーク」も、色の由来は樽だけじゃない

「ゴールド」と呼ばれるラムも油断できない。
樽熟成で自然に色がついたものもあれば、カラメル色素や香味料が加えられたものもあり、色だけでは風味も年数も判断しにくい。
WSETの記事によると、棚には、ジャマイカのアップルトン8年やキューバのハバナクラブ・エスペシャルのような、きちんと熟成されたラムと、英米のブランドが味を揃えて瓶詰めしたブレンド、バニラなどで香りづけしたスパイスラムが同じように並んでいる。
樽で寝かせたラムでも、その色のすべてが熟成に由来するとは限らない。
バッチごとの見た目を揃えるために、少量のカラメル色素を加える生産者は多く、色は木の影響を測る目安としてもあてにならないという。
「ダーク」に分類されるラムはさらに幅が広く、伝統的に熟成されたものから、香りづけやスパイスを強く加えたものまで混在する。
E150aカラメル色素や加糖で最終的な見た目を整えるものもあり、色が濃いからといって、長く熟成されているとは限らない。
ほとんど黒に近いラムでは、色は熟成年数よりも、ブレンドに使われた糖蜜や生産者のスタイル上の選択によることが多い、とWSETの記事は指摘している。
色の代わりに、何を見て選べばいいか

ここまで見てくると、ラムの色は、スタイルや風味、年数を測る指標としては、カテゴリ全体を通してあてにならない、というのがWSETの記事の結論だ。
代わりに見るべきは、年数表記があればそれを、無ければ蒸溜所やブレンダーの名前、原産国が定める製法の決まりだという。
これらのほうが、そのラムが軽やかでフレッシュなのか、重厚で豊かなのか、ほのかに甘いのか、辛口なのかを、色よりもはっきり教えてくれる。
原料や酵母、発酵期間、単式蒸溜か連続式蒸溜か、どこでどう熟成されたか、という背景も見えてくる。
自分も今度ボトルを選ぶときは、色の濃さより先に、ラベルの年数表記や蒸溜所の名前を確かめてみようと思う。
まとめ ― 色は、熟成の証明にならない

ラムの色は、ウイスキーのような「樽で寝かせないと名乗れない」という決まりが無い分、熟成年数や品質の目安にはなりにくい。
淡い色でも樽の影響が残っているラムがあれば、濃い色でもカラメル色素や糖蜜が理由になっているラムもある。
見た目の濃さに頼るより、年数表記や蒸溜所の名前、製法の決まりを確かめるほうが、そのラムの実像に近づける。
次にラムを手に取るときは、色の濃さよりも先に、ラベルに書かれた情報に目を通してみてほしい。
SipLog(酒譜)は、飲んだお酒の体験をAI推定と比較しながら記録する体験ログメディアだ。
今回は特定の一本を飲んだ記録ではなく、ラムの色と熟成年数の関係について、体験ログの立場からまとめておいた。
酒は、記録するともっと旨い。
